「蓋然性」という言葉には、「ある事柄が起きる確実性の度合い」という意味があります。
政治経済のニュースや哲学・学術論文などでよく使われる言葉ですが、正しい使い方を知らないという人もいるのではないでしょうか。
この記事では、「蓋然性」の意味や使い方などを例文を交えながら、分かりやすく解説していきます。
蓋然性の意味は『ある事柄が起きる確実性の度合い』
蓋然性の読み方は「がいぜんせい」です。
語源は中国語の「蓋」という漢字の持つ意味が由来になっています。
古代中国では「蓋」は「恐らく」や「確かに」といった意味があり、漢文の文頭に用いて「それ以下の文章が確かなことである」という意味で使われていました。
「然」は肯定や同意を表す語なので、蓋然という言葉は「恐らくそうである」という意味になります。
「蓋然性」という言葉は、明治時代の哲学者・井上哲次郎らの編纂した哲学用語辞典「哲学字彙」に掲載されたのが初出であると言われています。
『蓋然性』には
- ある事柄が実現する度合い
- 多分そうであろうと予測される度合い
などの意味があります。
「蓋然性」の正しい使い方を例文で紹介!
「蓋然性」は、ある事柄が起きる確実性の度合いで使われる言葉です。
間違った使い方をすると相手に伝わらなかったり、失礼な印象を与えてしまう可能性もありますので、例文と共に正しい使い方を知っていきましょう。
例文①
今日の天気予報は降水確率20%なので、雨の降る蓋然性は低い。
例文②
彼の訴える仮説は、蓋然性が低いように感じる。
例文③
彼女がミスキャンパスに選ばれる蓋然性はかなり高い。
例文④
今回の企画が上手くいく蓋然性は低いと思われる。
例文⑤
食品の保存方法を改めないと食中毒が起こる蓋然性が高い。
【蓋然性を使う時の注意点】
蓋然性は「高い」「低い」と表現するのが一般的です。
「蓋然性」の類義語・言い換え4選
『蓋然性』の類義語や言い換えの言葉は4つあります。
類義語を知り、同じ意味を持つ複数の言葉を使い分けることができると相手とのコミュニケーションが円滑になります。
相手の理解度や状況に合わせて、最適な言葉を選択していきましょう。
- 見込み
- 公算
- 確率
- 確実性
類義語①見込みの意味
1 先行きの予想。あて。「来春卒業の—」「明日は晴れの—です」
2 将来の可能性。「なかなか—のある男だ」「治る—のない病人」
3 《茶席で茶碗拝見のとき、まず内部をのぞき込むところから》茶碗の内部の底のあたりのこと。
4 建築で、部材の側面、奥行き。
5 見たようす。外観。
「—のやさしさ」〈浮・五人女・三〉
引用:weblio辞書
新居は今月中に完成する見込みです。
類義語②公算の意味
ある事の起こる確実性の度合い。実現する見込み。「成功の―が大きい」
引用:goo辞書
少子化で児童数が減り、来年にはA地区とB地区の小学校が合併する公算が大きいです。
類義語③確率の意味
ある事象の起こる可能性の度合い。公算。蓋然率(がいぜんりつ)。「—が高い」
引用:weblio辞書
今日の降水確率は40%です。
類義語④確実性の意味
たしかで疑うことができないこと。たしかで、危なげのないこと。また、その度合い。たしかさ。「―に乏しい流言」
引用:goo辞書
写真を撮っておけば確実性の高い証拠になるぞ。
「蓋然性」と「可能性」の違いは?
「蓋然性」と「可能性」は似ている言葉ですが、どのような違いがあるのでしょうか。
「蓋然性」にはある事柄が起きる確実性の度合いという意味がありますが、
それに対し「可能性」には、ある事柄が実現できる見込みという意味があります。
ふたつの言葉は似た意味ですが、「蓋然性」は確実性の度合いという意味で、ある事柄が起こるということがどれほど確かであるかということに着目しており、憶測や不確実な考えではなくデータや確率で判断した客観的な根拠がある際に使われます。
「可能性」はある事柄が実現できる見込みという意味の他に、その事柄が持つ潜在的な発展性という意味もあります。
その時点ではまだ確かではないが未来に向けて期待が持てるという見込みがある時に使われます。
すなわち「可能性」には主観的な表現も込められており、過去のデータや根拠が不確定な希望的観測で発言されることもあります。
「蓋然性」は客観的に確率として数値化できる、「可能性」は見込みなので主観的であるという使い分けをします。
「蓋然性」は英語で『probability』
probabilityは英語の『probability』に言い換えることができます。
英語の『probability』には
- 公算
- あり得ること
という意味があります。
「蓋然性」の対義語・反対語は『必然性』
蓋然性の対義語は、『必然性』になります。
必然性の意味
1 必ずそうなると決まっていて、それ以外にはありえないという要素・性質。「—に欠けるストーリー」「—がある」
2 哲学の用語。
㋐(自然的必然性)自然現象が法則性・因果性によっていること。
㋑(道徳的必然性)道徳法則を遵守することが義務として命令されていること。
㋒(論理的必然性)判断の確実の程度が最も強く、主語が必ず述語と結合していること。また推理で、結論が前提から論理法則に従って導き出されていること。
引用:weblio辞書
必然性には
- 必ずそうなるという要素・性質
- 成るべくして成る
- そうあって然るべし
などの意味があり、必ずそうなると決まっている時に用いられます。
身の回りで起こる事象に必然性を感じている。
蓋然性は「ある事柄が起きる確実性の度合い」という意味を持ち、必然性とは「必ずそうなると決まっている」という意味を持ちます。