「治外法権」という言葉には、「特定の外国人が現在滞在している国の法律に従う必要のない権利」という意味があります。
日本と外国の関係性を説明する際によく使われる言葉ですが、正しい使い方を知らないという人もいるのではないでしょうか。
この記事では、「治外法権」の意味や使い方などを例文を交えながら、分かりやすく解説していきます。
治外法権の意味は『特定の外国人が現在滞在している国の法律に従う必要のない権利』
治外法権の読み方は「ちがいほうけん」です。
「治外法権」は小中学校の歴史で学習する言葉であり、1文字ごとの意味は以下の通りです。
「治」=世の中をおさめる
「外」=外側・外国・一定の枠から外れる
「法」=おきて・定め・秩序を保つための規範
「権」=物事を従わせる力
『治外法権』には
- 特定の外国人が現在滞在している国の法律に従う必要のない権利
という意味があります。
「治外法権」の正しい使い方を例文で紹介!
「治外法権」は、使うシーンによって少しずつ意味が変わってきます。
間違った使い方をすると相手に伝わらなかったり、失礼な印象を与えてしまう可能性もありますので、例文と共に正しい使い方を知っていきましょう。
例文①特定の外国人が現在滞在している国の法律に従う必要のない権利をいう時
特定の外国人とは、外国元首やその家族・外交官などが当てはまります。
【例文①】
残念だが治外法権が適用されるため、A外交官の犯罪は日本では裁けない。
【例文②】
あの場所は治外法権エリアだから日本警察も立ち入れない。
例文②比喩的に使う時
治外法権は外国の法律が適用されるため「無法地帯」という意味ではありません。
しかし比喩的に使う時は「無法地帯」「ルールが適用されない」というニュアンスで使われます。
【例文①】
何の保証もなく低賃金で未成年を働かせるA社は、まるで治外法権だ。
【例文②】
あの横柄な態度は治外法権にいるような姿だわ。
【治外法権を使う時の注意点】
治外法権は2パターンで使うことができる言葉です。
- 特定の外国人が現在滞在している国の法律に従う必要のない権利をいう時
- 比喩的つまり無法地帯のようなニュアンス
また、在日米軍基地は日本領域であり日本政府がアメリカに対して使用を許可しているものなので、アメリカ領域ではありません。
したがって治外法権は適用されず日本の法律が適用されます。
「治外法権」の類義語・言い換え3選
『治外法権』の類義語や言い換えの言葉は3つあります。
類義語を知り、同じ意味を持つ複数の言葉を使い分けることができると相手とのコミュニケーションが円滑になります。
相手の理解度や状況に合わせて、最適な言葉を選択していきましょう。
- 外交特権
- タブー
- 聖域
類義語①外交特権の意味
国際法上、外国の外交使節団および外交官には、一般の外国人とは異なる特別の保護・待遇が与えられる。これを外交特権または外交特権免除という。
引用:コトバンク
外交特権を持つ外交官は日本国内でのいろいろな税金を支払う必要がありません。
類義語②タブーの意味
《(ポリネシア)tapu(はっきり印をつけられた、の意)から》
- 聖と俗、清浄と不浄、異常と正常とを区別し、両者の接近・接触を禁止し、これを犯すと超自然的制裁が加えられるとする観念・風習。また、禁止された事物や言動。未開社会に広くみられる。禁忌。禁制。
- ある集団の中で、言ったり、したりしてはならないこと。法度 (はっと) 。
引用:goo辞書
あの事件の話はタブーになった。
類義語③聖域の意味
- 聖人の地位または境地。
- 神聖な地域。神社・寺院の境内、神が宿るとされる所など。
- それに触れてはならないとされている問題や領域。
引用:goo辞書
絶滅危惧種の聖域として森を守るプロジェクトを立ち上げよう。
「治外法権」と「領事裁判権」の違いは?
「治外法権」と「領事裁判権」は似ている言葉ですが、どのような違いがあるのでしょうか。
「治外法権」には特定の外国人が現在滞在している国の法律に従う必要のない権利という意味がありますが、
それに対し「領事裁判権」には、外国人が滞在している国の法律で裁判は行わず、本国領事が本国の法律で裁判を行うという意味があります。
どちらも「外国人が滞在している国の法律を適用しなくてよい」というニュアンスがありますが、「治外法権」の一部に「領事裁判権」があります。
違いを大きく分けて2つ紹介します。
【違い①人物範囲】
- 「治外法権」=特定の外国人(外国元首やその家族・外交官など)
- 「領事裁判権」=特定ではなくその国に滞在している一般の外国人も含む
【違い②意味範囲】
- 「治外法権」=三権(立法・行政・司法)に縛られない権利
- 「領事裁判権」=裁判のみに適用される権利
「治外法権」は意味範囲が広く「領事裁判権」は裁判のみと意味範囲が狭いです。
また「治外法権」は現在も存在する国際法ですが「領事裁判権」は廃止されています。
【領事裁判権廃止の歴史】
江戸幕府の末期の日本は領事裁判権を認めていたため、日本に滞在している外国人が罪を犯しても日本人では裁判ができず、裁判は外国領事が行っていました。
そして幕末後の明治政府は領事裁判権の撤廃を実現することも課題の1つとして、明治27年(1894年)明治期の外交官である「陸奥宗光 むつ むねみつ」が撤廃を実現させました。
「治外法権」は英語で『extraterritoriality』
治外法権は英語の『extraterritoriality』に言い換えることができます。
英語の『extraterritoriality』には
- 治外法権
という意味があります。
Extraterritoriality applies to specific foreign nationals.
(治外法権は特定の外国人に適用される。)
「治外法権」の対義語・反対語はありません
治外法権の対義語はありません。