FC琉球 2019を振返る 〜特別対談インタビュー〜

おきなわ倶楽部 WEB号 vol.013

2020-01-30 公開   2020-01-31 更新

おきなわ倶楽部 2020年1月号「FC琉球 倶楽部」掲載
本誌では一部抜粋でお読みいただいたインタビューの完全版

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2019年の暮、急な提案にも関わらず、J2初年度を終えた想いを届けようと、お忙しいお2人が集まってくれた。
『今まで応援してくれた人と、これから出会う人』へ語られたのは、それぞれの視点から見たクラブ全体の変化や、お互いの想いに導かれる答えの行き先だった。
「強くて有名な地元クラブ」だけが完璧な答えじゃない。だけど可能な限り完璧に近いクラブが欲しい。そのために出来ることや変わることは何か。サッカーの戦術以外の部分で考える、地元クラブチームの動きや強さを、ぜひ多くの人に知ってもらえたらと思う。


インタビュー日:2019年12月17日 
那覇市「FOOT BALL CAFE CAMPNOU」にて

代理テキスト


■2019年、J2初年度を振り返りどんなシーズンだったと感じますか?
三上社長(以降は三):僕はJ2に昇格してから来た身なので、これまでの長い歴史をみて、池間さんはどうですか?ときいてみたいです。どうですか?
池間店長(以降は池):まずは残留おめでとうございます。サポーターもクラブも何が起きるか、J2はどういうリーグか探りながらの1年でしたね。J3昇格時に1000人集まったのも凄かったですが、J2ではお客さんの意識に変化が見られたのが大きいです。観に来る感覚から『応援に行く』に気持ちが変わり、遠巻きに観てた人もスタジアム内に入ってくるという変化が嬉しかったですね。
三:アウェイチームに有名選手がいるのも大きかったですね。
池:対戦相手も元J1で聞き慣れたチームだったり、元日本代表とかも沖縄に来る訳ですからね。
三:それこそ、1万2千人が入場した日は凄かったです。
池:会場についた時、早めに行ったんですが、すでに入場待機列が2列だったのに驚きましたね!沖縄の人は行列が嫌いだから試合前にパパっと来て入る人がほとんどなのに、試合開始より随分前でこの行列なんだ!と。『いよいよJ2に来たんだな』って実感した日でしたね。アウェイでもこれまで多くて100人〜200人だったサポーター数が1千人になった日もあり、その本気の応援を見て、負けられないとチームも声を出し合う姿が良かったです。
三:初年度だからというボーナスは有ったと思います。その回収を来シーズンできる様に頑張って1年やってきたので、次の開幕戦は結構人が集まるのではと考えています。色々、試行錯誤でやったのもあり今シーズンはあっという間に感じました。
池:アウェイの顔ぶれも変化が大きくて、沖縄好きの方や親族に沖縄出身がいるので沖縄のチームが来るのが嬉しいんだと家族で来てくれる人もいて、その想いがとても伝わってきて、もっと答えられたらと感じました。
三:今シーズンのアウェイは苦しみましたからね。
池:勝てない中でアウェイサポーターさんが、我慢して応援してくれたのは大きい!来年は戦術も研究もされているし、戦力も散ったり、もっと厳しい環境になると思うので、樋口さんがどれくらいチームを作って、チームがパワーアップしてくれるか期待しています。
三: 一緒にJ2へ上がってきた鹿児島が、今シーズンでJ3に落ちてしまったという現実は、本当に怖さを感じましたしね。
池:しかもJ3から昇格するのは元J2だったチームなので、戦い方やリーグの事は琉球より熟知していますから、1年目の積み重ねをどう発揮するかですね。
三:ただスタジアムの雰囲気は連勝していた頃より、シーズン中盤の方が盛り上がっていた様に感じました。
池:J2独特の盛り上がり方もあったと思います。連勝し首位に勝ち、中盤で選手が抜かれ苦しい時期を戦い、残留争いをするという、J2の楽しみ方を全部体験した気がするシーズンでした。


■今のスタジアムで感じる空気や問題について、どう考えますか?
池:集客が見込めるようになると応援も変わると思います。100人でやっていた応援を大勢でやる方法を考えたり。試合以外の楽しみにも注目が集まり、イベントやフード販売も充実し、アウェイサポーターも増えスタジアム周り全体で賑やかになりましたね。
三:ただやはりアクセス面での問題が多くて、初めて訪れる人には大変そうに感じられるのが問題です。
池:アウェイでのアクセスもですが、『楽』に行ける何かをもっと作りたいですね。
三:1万2千人が入った試合なんかも、こんなに多くの人がどこから来たんだという感じでしたから。
池:アクセスの不便さが有りながら、かなり人が来てくれている事実は感謝しないと、と思います。
三:去年(2018年)と違うぞ!と肌で感じている人も多く、シーズンパスやウェアの売れ行きが凄くて、僕はそれを次年どう回収していくかって常に考えています。
池:来年に向けクラブがどれだけ体力をつけてくれるかも求められていますね。


■サポーターのリアルな声として外せない駐車場問題ですが、解決の糸口はあるでしょうか?
池:タピスタでの事を考えると、他にもスポーツ施設が多いので、そこの催しと試合が被った日は双方にダメージが出ます。施設側との調整も今後は考えないといけないでしょう。近隣に有料でも駐車場を増やし試合前後は定額にしたり、那覇中心からのシャトルバスや、タピスタまでのタクシーを定額にするなど、他県のスタジアムでもアクセスが悪い所は色々と考えていて、それが出来ればと感じます。でもこれはクラブだけで抱える問題ではないので!


■県内の様々な催しやイベントの「駐車場問題」を目の当たりにしますが、個人的に私はFC琉球の試合は近隣病院駐車場を使えたりや大型モールからの定期バスなど、できる範囲の準備をやってくれている印象があります。でもバスやタクシーがさらに整えば、スタジアムでの飲食品の購買意欲に繋がりそうですね!
池:あと駐車場事情は、取り組んでいる状況やサービスを初めて来る人にどれだけ伝えられるかが重要です。公共交通機関をお使い下さいと言いたくても、それ自体が限られた地域なので少し難しい。アウェイサポーターや購買意欲を盛り上げる意味でも、さらなるアクセスの準備は必要ですね。車内や会場での広告を使い、お互いに良い着地点を見つけられたらと。またモノレールも浦添まで延長されたので、そこ起点にするとアウェイサポーターには喜ばれます。スタジアムが那覇なら、バスも多いので公共交通機関をとは言いやすくなるとは思います。
三:県外でもサッカースタジアムはアクセスの悪い場所が多くシャトルバスをよく見かけます。アクセスが整っているプロ野球とは状況が違い、サッカーは随分遅れている現状です。逆にそれを逆手にできたらと考えていて、僕が注目している分野ではITですね。まだ沖縄では馴染みの薄い新しいITサービスも、行政や企業と組んで取り入れられたらと。沖縄はタクシー利用頻度数が日本一なので、配車から乗車・決済など、キャッシュレス含めスムーズで面白いサービス展開ができればと考えます。こういった取り組みは県民の社会問題解決にも繋がるし面白いと思う。僕らは他のクラブと経験の差がありますが、経験に勝てるアイデアや挑戦で勝負をしなくてはと思います。そういう話でもやはり目標は専用スタジアムですね。

無題


■シンポジウムでも話された専用スタジアムは夢物語ではなく、現実的な「目標」として多くの問題を解決するゴールであり、次世代へクラブを繋ぐスタート地点と言えますね!
池:専用スタジアムで新展開が出来れば、多くの問題が解決します。2万5千人みんなが入ってSNSやネットを駆使してもwi-fiが快適に使えるなど、情報発信やネットワークに強いという特徴も面白いと思う。その場のことはすぐに拡散される世の中ですから、常に最先端を大事にしていけたら良いですね。
三:それはとても大事です。そして僕の理想ですが、県内の大イベントでは老若男女・外国人など色んな人が集まるものが多いなと感じます。全国的にサッカースタジアムでは、偏った年齢層が集まるのが大半で、ファミリーが多めの沖縄は凄く珍しいケースなんです。だからFC琉球のスタジアムは、幅広い人が集まる事を特徴にしたいなと思うんですね。現状は子どもが多くて親御さんも多いですが、おじいちゃんやおばあちゃんは少ない。若い女の子も少ない。沖縄ってビアフェスとかエイサーとか、どの層のお客さんも多くいるので、そんな風になれないかなと思うんです。沖縄のスタジアムって、他と比べてぶっちぎりで子ども来場が多く、来場者平均年齢は一番若いんですよ!
池:確かに小さなお子さんや小学生は多くても、高校生や大学生、中間層はまだ少ないんですよね。


■私は取材時に若い男性数名で、飲み会代わりに皆で観に来たというグループには出会いましたよ。そういった人たちがボックス席に収まったり、小さなお子さん含むファミリーが一家揃って観戦出来るような座敷席など、専用スタジアムなら実現できるのかなと思えました。女性グループも見かけますが、沖縄はバスケ人気も強いので!若者や女性には熱狂的なバスケファンが多いイメージもあります。バスケの試合会場では試合以外でのエンタメ性も高く、一体感を感じられる参加型演出が目玉になっている様ですね。
池:室内競技なので女性も気軽に行けるという点があると思います。でもサッカー人口も同じ様に多いので、数では無いと思っています。専用スタジアムを持っている他県のチームは、そういうエンタメ性を重視した催しを行っている所もあります。要するにアーティストコンサートみたいな、イベントや祭り的な動きですね。他の良いところは、どんどん真似したり取り入れたりしたいですね。
三:この部分はこれからだと思います。このシーズンは僕らも何人くらい入るか分からず、他にやらなくてはならない事が多く、そういった部分にかけられるコストがあまり無かったなと感じてます。


■逆に屋外だから出来るアトラクションが増えると面白そうですね。風船飛ばしや客席でウェーブを作ったり。水や泡かけ遊び、シャボン玉、花火など、どれもやはり専用スタジアムならというアイデアが思いつきますね。
池:ウェーブも人数が必要なので、客席が埋まってきた今なら、満席に近いスタジアムならという気持ちがあります。
三:ウェーブいいっすね!
池:その場にいる人みんなを参加させることが重要。たまたま声出したら勝った!という経験が必要。それにはやはり勝利と、全体が繋がっていくことですね。チーム・クラブ・サポーター・スポンサー、全てが協力し合える事。来シーズン、残留出来ればまたそんな状況も大きく変化していくのかなと思います。クラブの運営もずっとカツカツじゃキツイっすよ、そんな部分も変わっていくと思います。


■個人的に今シーズンとても楽しく、サービス面も過去と比べて十分に充実してきたと感じました。改善点や欲しい事柄はまだまだありますが、10年前を思い起こすと『FC琉球!こんな立派になったのか!』と感動できる場面はたくさんあります。今後は新しく増えていくであろうサポートも勿論ですが、今あるものを、どう最大限に活かして新しいものに飛躍させるか大事だと感じます。
三:ありがとうございます。
池:沖縄なんだし、好評だった浴衣デーをもっとやってみて良いと思うよ!
スタッフ:やったんですけど、タイミング的に暑すぎて。
池:今度は中秋の名月とか、涼しい時期にもやりましょう!
三:ファミリーマートさんや森永ヨーゴさんとも色々コラボができ、実際に売上が伸びたと聞いて嬉しかったです。そういった企画はもっとやってみたいし、タイアップしていただいた企業側へ、ちゃんとお返しができたのはビジネスマッチングが少なからず成功したと、良い成果だったと思っています。


■応援グッズのラインナップも増えましたね!次は女子専用グッズも欲しいです、ヘアアクセサリーはグッズ商戦で、どこも注目していると聞きます!女子向けと言えば、イケメン総選挙なども楽しいイベントでしたし、新しい層のファン獲得として良い機会だったと思います。
池:女子グッズはもっと沢山あってもいいと思いますね!ヘアアクセサリーだけでなく、普段使いができるタンクトップとかは、周囲で何年も求める声を聞きます。
三:イケメン総選挙は評判が良いですね。色々なアイデアを聞いて夢が広がります。今年はこなす事に必死だったので、来年もっと飛躍して一味も二味も違っていけるように頑張ります。


■沖縄の現状を見て、三上社長が思う『こうなったらいいな』と言う点はありますか?
三:スタジアムでブーイングが起きなかったり、暴動が起きないウェルカムな姿勢が沖縄の良さだと感じています。その部分をスタジアムでもっと出したいですね。僕たちだけでなくサポーターやスポンサーが一丸となって、お客様をお迎えする雰囲気を作りたいです。レノファ山口FCに訪れた際、スポンサーの社員の方が訪問した僕らを案内をしてくれたんです。スポンサーは『お金を出している会社』という立ち位置ではなく『自分たちのクラブだ』という気持ちでそうしてくれたようでした。そう言う意味で、ホストとして関わってくれる方たちを増やしていく事こそ、僕らがまだ辿り着けていない部分だと思います。もっと身近に、もっと感情を移入して『このクラブは自分たちのクラブだ』と感じてもらえたらと思います。
池:サポーターも同じで、応援したいって思わせられてるかは常に課題です。一緒に応援したいと思う人はいても、一部の盛り上がっている人たちの塊を見て、なんだか本格的で敷居が高そうって言われるんです。声かけ合ったりフラッグを渡したり試行錯誤しながらですが、そう思わせないスタジアム全体での一体感を作っていきたいですね。
三:僕はそういった雰囲気を作るのは、強さじゃないと思ってるんです。クラブの枠をどう越えていけるかだと思っていて、どんな風に地域貢献できるかという部分をいつも考えています。そして沖縄といえば「FC琉球」と認めてもらえるかです。例えば企業ならオリオンビール、ブルーシール、A&Wとかが「沖縄といえば」で名前が上がると思うんです。そういう企業のアイテムがお土産として並んでいる様に、FC琉球のグッズも土産店に『沖縄のもの』として並ぶようなクラブになりたいです。アメリカの大学名がパーカーとして、有名野球チームの名が帽子として一つのアイコンを作るように、沖縄の文化の一つになりたいですね。
池:強くなくてもとは言っても、やはり何かしら感動を貰ってほしいし、与えたいじゃないですか。勝利は嬉しい、負けて悔しいという気持ちだけでなく、首里城再建を応援する一体感や、試合中に感じる一体感をどんな風に作れるのか、サポーターを代表して今後も考えたいと思います。チャントや試合前後の雰囲気や、ゴール裏まで広く横に大きくなった応援団では、どんな景色が作れるかなど、変化に合わせて応援方法も考えて、さらなる変化を与えて行かなくてはと思います。

無題


■MONGOL800が演奏に来た時、ファンの人とそうでない人の枠を越えて、誰もが曲に合わせて口ずさみ、手を上げて笑顔になる一体感がありました。そんな場面に学ぶところがあるのではないかと思います。
三:本当にそうです、音楽とサッカーは凄いんですよ!どちらもブラジルのように、沖縄と相性が良いと思っています。
池:琉球愛歌というシンボルが出来たのも大きいです!アウェイでは琉球愛歌を歌うサポーターを観に、対戦チームのサポーターが近づいてくることがあるほど注目されています。だけど沖縄の人は、本当に恥ずかしがり屋なんですよ。浮いてしまうのが恥ずかしい!だから一カ所で盛り上がっている僕ら(応援団)を「特別な人」だと思っている人がまだまだ多いので、そのイメージをどう崩すかですね。感触としては、あと少しで変わる気がしています。


■それでは最後に、来シーズンへの気持ちをそれぞれ教えて下さい。
池:J2の2年目、サポーターを代表して応援をもっともっと広げて、スタジアムの景色を変化させたいと思っています。描いていた夢を実践していける1年にしたいです!
三:僕らクラブ全体で「沖縄を愛し、沖縄に愛される」という理念を掲げたんです。琉球のシンボリックな存在として、琉球のオーラを身にまとえるように。その理念をどう体現して活動できるか、それはサッカーを含め、サッカー以外の部分でもです。県外出身か県内出身かは関係なく、ここに来たからにはクラブの一員ですし県民になっているわけですから、選手にもそれをどう感じて行動してもらえるか、フロントスタッフとして伝えていけるかだと思っています。
池:「沖縄を愛し、沖縄に愛される」ってクラブが掲げている事が県民として嬉しくて、やっとこういう理念を掲げられるクラブに変わってきたんだなと、長い年月や歴史を思い出します。地域密着の一歩前にお互いが愛し合い信頼関係を気づけているか、「密着」と言う曖昧な言葉だけで終わらず、この理念を出したクラブは本当に素晴らしいと思っています。
三:有難うございます、これがどこまで伝わっていくか。伝えられるように全力で挑みたいと思います。

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PROFILE

■クラブ代表
FC琉球 代表取締役社長
三上 昴
1987年生まれ、東京都出身。琉球フットボールクラブ株式会社の取締役をへて、2019年4月より代表取締役社長に就任。

■サポーター代表
FC琉球サポーターズグループ「Ryukyu Granas」
FOOT BALL CAFE CAMPNOU
池間 弘章